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私はある時、多くのモノを失った....。
夢、希望、可能性、大切な人達ーー。
そこには色々なモノがあるが、それがある日を境に次々と失われていった。
きっかけは父が鬱を患った事。
父は感情的になりやすい人だったが、明るく笑顔の絶えない人だった。
そんな父が鬱を患ったのは、私がゲームデザイナーになる夢を追い東京へと、上京していた時である。
それは私が夢を追っていた最中の事。
不意に私の携帯に母から連絡があった。
その連絡とは、父が風呂場で自殺しようとしたという内容。
だが正直、その連絡を受けても私には、それが現実だとは思えなかった。
何故なら私にとって父は、明るくて不器用ながらもガムシャラに頑張るーーそんなイメージの人だったからである。
そして、面倒見の良い人だった。
私は我が耳を疑いながらも一度、父の様子を見に東北へと帰る事にしたのである。
しかし、実家へと戻り病院に赴いた私の前に、私の知らない父が待っていた。
かつての明るい笑顔もなく、虚ろな瞳で現実以外の何かを見詰める父。
父は姿こそ、かつての父だったが中身は最早、脱け殻だった。
父がそうなった理由は、あるネットワークビジネスにのめり込んだ事。
父はそれを転職だと誤認し、無理な業務を続けた結果、手をつけてはいけないお金まで使い果たし燃え尽きたのである。
そして、自分の行いに責任を感じた父は責任に押し潰され、死を選んだ。
それが自殺未遂の経緯ーー。
だが、私は信じていた。
また皆で一からやり直せば、大丈夫だと。
それは多分、母や弟も信じていたに違いあるまい。
そんな思いで私と母、弟は父が復帰するまで、家業である飲み屋を手伝う事にした。
しかし、悪い時には悪い事が続くものである。
そんな中、家族同然に過ごしてきた愛犬が、車に引かれて死んだ。
十数年共に過ごした愛犬。
愛犬は、首の骨が折れていたが母の顔を見るまで意識を保ち、母の顔を見るなり最後の力を振り絞り、小さく鳴き声を上げた。
それが愛犬との別れーー。
同然の事ながら、愛犬の死を知った父はショックを受けていた。
そして数週間後、私は再び東京へと戻る。
理由は自分の夢を叶え、早く父や母を楽にする為。
それと父を含む家族を信じていたからだ。
頑張れば必ず、報われるとーー。
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