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そして、私は母と家業に励む事となる。
だが、私は既に空っぽだった。
恩を返したかった父は死に、愛犬を失い、目指すべき夢も無くーー。
ごっそりと自身の内側から、中身が抜け落ちてる気がした。
生きている感覚は無かった。
それを裏付けるかのように、私の上唇の色がゴッソリと抜け落ち白く変わる。
良く、恐怖で髪の毛が一夜にして白髪になる話しがあるが私はその時、それが事実である事を知った。
心の喪失が大きければ大きい程、喪失した結果が体に影響を及ぼすのだと。
その日から毎日が地獄だった。
生きるという行為自体が、苦痛に他ならなかったからである。
生きる理由が分からない。
生きる意味は何だーー?
苦痛だった。
そんな中、新たに犬を飼うことになったのだが、その子は幼い事もあり、急に道路に飛び出す。
そして、仔犬は横から車のタイヤに衝突した。
その直後、私は反射的に動き自分が引かれる可能性があるにも関わらず、道路へと飛び出し仔犬を抱き抱える。
もう耐えられなかったのだ。
誰かの死を見るのはーー。
だから迷いは行動に迷いはなかった。
運良く、仔犬は前足を軽く踏まれただけの軽傷で済み....私は胸を撫で下ろす。
その後も生きる事は、苦しみで満ちていた。
父の死から数ヶ月後、義理の祖父が死に、また半年もしない内に父方の祖母も命を落とす。
不幸と苦の連鎖ーー。
生きている限り続く苦しみ。
だが、その苦しみ故に私は理解できた。
父の苦しみの日々をーー。
私は明らかに病んでいた。
恐らく、躁鬱だろう。
普段は生きる苦しみしかないが、不意に何かが出来るような根拠の無い希望が涌く。
しかし、その希望とやらも根拠が無いが故に直ぐ熱が冷め、絶望と苦しみだけが残る。
そんな事を何年繰り返しただろうか?
当然、幾度も死への誘惑はあった。
包丁を見る度に自らの手首や、喉元を切り裂きたい衝動に駆られ、車を見れば車の前に飛び出したい欲求に駆られる。
しかし、何時もある思いが私を思い止まらせた。
父の分の幸せにならなければーー。
そんな思い。
父の人生は苦労の連続だった。
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