守り抜く透明な意義よりもそれを

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清文さんに、芙蓉姉さんさんが亡くなったことを知らせる文を出した。すぐに来てくれた。 胸が苦しくて先が怖くて、私の人生にもう芙蓉姉さんがいないことが、まだ、実感出来てないのに、「もういない」ということだけが、手の震えでまざまざと感じられた。 芙蓉姉さんがいない夜に、清文さんが来てくれて本当に良かった。 それは誰かと寝なければいけないだとか以前の問題だった。 久しぶりに会った清文さんは、血の気の引いた顔をしていた。 「桜さん、大丈夫ですか?」 「いえ、これでも全然大丈夫じゃないんですよ」 「すみません、どう言葉をかけたら良いか……」 「会いに来てくれてありがとうございます、今はそれが本当に助かってます」 「そうですか……」 私は彼の顔を見つめて、瞳の奥、そして心の奥底を見つめようとした。彼を欲しがった。 彼に所有されたがった。 こんな時なのに。 でもそれを瞬きで留めた。 きっと。 きっと、一緒にいたいと願えばまた失う。 芙蓉姉さんのように。 私は望んではいけない。 願ってはいけない。
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