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初熱
大きな門。
賑やかな人通り。
嬌声と欲の息遣いが聞こえる部屋。
見定めている目と目と目。
ここは豪華絢爛な天国と地獄、遊里。
思い出話をしよう。
「芙蓉姉さんが……」
まだ禿の椿が真っ青な顔をして部屋に駆け込んできた時、私は芙蓉姉さんから貰ったお菓子を食べていた。
口に放り込もうとしていたその甘い甘いお菓子は、指先から離れ、畳を転がった。
芙蓉姉さんが、病にかかった。
遊女が一番恐れていること、それは折檻でも客足の途絶えでもなく、本当は、病にかかることだ。
遊女の病は命に関わる。
こんな所でしか生きられない私たちだが、それでも生きてはいたいのだ。
「桜、芙蓉が病になった以上、ここで飯を食うなら客を取らなくちゃ行けないんだよ」
お内儀が渋い顔をしつつキセルの煙を吐く。
「それに、お前椿だって居るし、あの子はまだ小さいから自分で客を取るなんて無理だよ」
そうだ。まだまだ小さい可愛い椿が自分で客を取ってご飯を食べるなんて無理だ。
それに私もご飯を食べないと生きていけない。
客を取る。
新造出しを芙蓉姉さんにしてもらってからまだ日が浅い。こんなに早く、こうなるとは思っていなかった。
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