2 玻璃の心

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 隼勢と、もうひとり古参の武士(もののふ)に肩を借りる形で本営に戻る。矢傷を負った足で斜面を登るのはさすがに堪えた。  初冬の陽はすっかり落ち、比良山の頂には森々と冷え渡る星夜が訪れている。しかし本営の周囲には篝火が焚かれ、勝ち戦に沸く歓声が陣の外にも漏れ聞こえてきていた。 「本営のやつら、儂らより先に祝杯を上げておるわ。一番の(いさお)しは、我らが若であるというに」  肩を担ぐ弥蘇爺が、乾杯の場に居合わせられなんだと云ってぶつぶつ零す。 「済まぬな弥蘇爺。俺の怪我さえなければ、ゆうゆう乾杯に間にあったであろうに」 「若の謝ることではござらんて。本営の奴らにちぃとは我慢ちゅう言葉を教えてやらなあ。爺は別にええが、若を差し置いてさっさと乾杯するたぁ不届きな……」  爺の延々続きそうな不平に神久良が小さく笑ったので、隼勢はほっとする。
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