絵師一笑・流島に生きる

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「喧嘩両成敗とし、稲荷橋狩野家は断絶、春賀の子春朝は八丈島に遠島を申し渡す」 と奉行は言って奥に去っていった。 続いて宮川一門に対して、長春は集団暴行で瀕死の重傷から死亡していた。 一〇日ほどして、牢屋敷から出された一笑は、一般の牢舎ではなく、遠島予定者の東口揚屋に収容されて、流人船は頻繁に出るものではなく、年に二、三回位流人の溜まるのを待って出航するらしい。 それまで一笑は老屋敷に粗末な食い物と、不自由な老生活を送らなければならなかった。 遠島と沙汰が下されても、行き先は教えてもらえない。出航の前日に告げらえる。 「遠島には何時頃でるんでしょうか」 牢番が、面倒くさい顔つきで、 「次の流人船は秋には出るであろう」 「お前は一体何をしでかしたのか」 「ちょっとした刃傷沙汰に巻き込まれてね」 「で仕事はなんだい」 「絵師だ」 「ほう、」 次の日牢番は紙と筆を持ってきて 「何か描いてみな」 そこで鶴と松を描いてみた。 「ほう、うまいね」 その日から、何かにつけ牢番は優遇してくれた。 「明日、伊豆新島に行く船が出る」 「へー、わたしゃ、伊豆新島」 「そうだ、向こうで達者で暮らせよ」 「お世話になりました」 江戸湾の入江に連行され、永代橋の船着場から流人船に乗せられた。見張り役人五人とと船乗りが一〇人ほど、遠島を罪人は五〇人くらい。 八丈島まで行く途中それぞれの島に降ろしながら向かう。風任せ史お任せの帆船である。 永代橋船着き場は長さ一〇〇間、幅三間の細長い桟橋に、廻船、公儀御用船、それに伊豆七島に送られる流人船が発着する。 囚人は船底の狭い部屋に閉じ込められ、満足に食物も与えられない。八丈島まで着くまで死人が続出、着いた島で埋葬される。 一笑は我慢強く、死んでたまるかの気持ちで、新島に着くのを待った。 「お前さんは、どこの島に」 「新島だ」
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