生命のゼンマイ

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 あちらこちら寄り道しておりますが、そろそろ本題ということで一柱の神さまにスポットを当てさせていただきます。この方に与えられているお仕事は、人の生き死にが正しく行われているかを監視することですので、さしずめ死神さまみたいなものでしょう。  ここで勘違いされては困るのですが、人の生き死には、この死神さまが勝手に決めているわけではありません。人間ひとり一人に寿命というものが予め定められていて、それに従っているだけなのです。  西洋の絵画では、死神さまは大きな鎌を携えた髑髏(しゃれこうべ)の姿で描かれがちです。しかし、あれは死神さまが人の命を恣意的に刈り取っていくという誤ったイメージによるものに過ぎません。かの大鎌も、死ぬはずの人間が何かの手違いで生き延びてしまった時にちょいと止めてあげる、その様をビジュアルで大袈裟に表したものなのです。つまり、死神さまといっても、そんなに恐ろしい存在というわけではないのです。  その死神さまのお仕事、先に人の生き死にを監視することと申しました。死神さまの職場には世界中の人間と一対一で対応する機械人形が置かれています。死神さまは、その動きぶりを見ているわけです。これらは、ゼンマイ仕掛けの玩具なので生身の人間のように複雑な動きをするわけではありません。手の上げ下げを行ったり、頭を右に廻したり左に廻したり、歩いているようなイメージで足を動かしたり、だいたいその辺りが関の山なのです。それでも寿命に余裕のある人のものは元気に、死期が近づいている人のものは鈍くなるぐらいの対応はあるようです。
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