生命のゼンマイ

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 さて、ここで紹介させていただく死神さまなのですが、この方、性格がかなり緩い、端的に申しますとルーズなお方です。昨日も職場を抜け出して人の世に遊びに来ていたようです。見た目は、かの大鎌を持った髑髏ではなく、ごく普通の人間です。いえいえ、狸や狐ではありませんので化けているわけではありません。実際に存在する人間に乗り移るのです。他人の身体を借りて、人の世を遊ぶといったところです。  この夜の死神さま、見た目、チョイ悪な青年実業家を選んだようです。その姿で行きつけのバーへ、そして馴染みのバーテンさんと世間話、ちょうど居合わせた女の子にちょっかいを出してアヴァンチュール気取り。 「ねえ、このブレスレット、かっこいいね、ちょっと見せてくれないかな」 とかナントカ語りかけて、女の子を手に触れたりしています。そんなセリフが自然に吐けて、そして相応の振る舞いが自然に付いてくるような人物を選んでいますので、女の子の方もまんざらではなさそうです。  死神さまに言わせますと、これらのことも実は仕事の一環なのだとか。こういう形でいろいろな人間を観察して、生きるに相応しいかどうかを見極めているのだそうです。いい気なものでございます。
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