恋文

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「これ・・・受け取ってほしいの」 そう言って彼女は、封筒を差し出した。 彼はそれを受け取り、封筒を開ける。 中には白紙のままの便箋が数枚、入っていた。 「これは?」 彼は不思議そうに彼女を見た。 「私、あなたにどうしても伝えたい気持ちがあって、手紙にしようと思ったの。だけど、その気持ちが、溢れすぎて、一晩中その便箋に向き合ってたのに、書けなかったの。あのね、私」 頬を染め、小さく震えながら気持ちを伝えようとする彼女を、彼は便箋を握ったまま強く抱きしめた。 「ありがとう、充分、伝わったよ」 彼女は安堵し、彼の腕のあたたかさに身を委ねた。 the end
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