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「はぁー・・・」
さっきの嘘の罪悪感を引きずり放課後すぐに帰る気がおきなかった私は、頬杖をつきながら窓の外を見つめていた。
空は昨日の大雨が嘘みたいに晴れている。そして運動場では陸上部の人達が練習をしていた。
その中にもちろん宇田くんもいて、短距離ダッシュを繰り返していた。
他の人もいるのに、目は宇田くんばかりを追う。
昨日の雨上がりの虹と、彼の笑顔で頭がいっぱいになった。それを思い出しただけで、胸がきゅんと痛む。
妄想、もとい創作の為の構想をいつも考えているけど、クラスメイトの男子を見てこんな風に妄想するのは生まれて初めてで、自分でもこの気持ちが何なのかよくわかんなかった。
宇田くん、小説、読んでくれてるかな・・・。
そう思った瞬間、短距離ダッシュを終えた宇田くんが私の視線に気づいたのか、ふと視線を上げた。
そして、二階の教室から運動場を見下ろす私とちょうど目が合った。
どうしよう・・・ずっと見てて気持ち悪いとか思われたかな。
そう思って動揺している私に、宇田くんは汗を手で拭いながら満面の笑みを浮かべ軽く手を挙げてくれた。
戸惑いながら小さく手を振り返すと彼は踵を返し練習に戻っていった。
妄想をしている時の1000倍、心臓が破裂しそうにドクドクと脈を打つ。
「どうしよう・・・」
ドキドキを止めようと胸をギュッと掴んだけれど、全然おさまらない。
今まで妄想の世界の男子としか関わった事のない私はどうしていいかわからず、鞄を抱えて教室から飛び出した。
帰り道を風を切って駆け抜けていたけれど、途中で足がもつれてこけてしまった。
そこはちょうど河原沿いの芝生で、しばらくうずくまっていたけれど、ゆっくり上半身を起こし、仰向けに大の字になった。
少し茜がかりはじめた空を見上げながら、心臓は相変わらずバクバクいっている。
きっと、このドキドキは、走ったからだ。
私は心の中で自分にいい聞かせるように繰り返し、ゆっくりと目を閉じた。
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