恋文

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それから数日が経った。 その日はちょうど7月の初めで、制服が衣替えのタイミングだったので用意していた半袖のシャツにのろのろと袖を通した。 家を出ると、雲ひとつなく、日差しもまぶしかったので顔をしかめ、そしてひとつ大きくため息をついてから高校に向かい歩き始めた。 数日が経つけれど、あれから宇田くんから小説について何も触れられなかった。 面白くなくてどう感想していいかわからないのかな? というか、もしかして忘れてるのかも。 宇田くん本人に尋ねる勇気がおきず、ネガティブな考えばかりずっとグルグル考えていた。だからこの数日は数年なんじゃないかと思う位長く感じた。 学校に着いていつものように2年A組の教室の扉を開けて自分の席に向かうと「おはよう」と声をかけられた。 俯いていたので顔を上げると、宇田くんが目の前に立っていた。 「う、うう宇田くん・・・!」 ずっと頭を悩まされていた張本人が目の前に現れたことに私はひどく動揺した。 「花枝さんに借りてた小説、読み終わったよ」 「あ、うん。ど、どうだった・・・?」 「んーそうだなー。白紙の便せんで伝わる男って、ありえねーとか思ったけど、なんていうか、そのありえなさが面白かったよ」     
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