恋文

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「へー・・・」 何か想像していた感想とあまりにもちがいすぎて頭がついていかなくてリアクションがとれず生返事をしてしまった。 「ああゆうの、由香好きそうだしさ。由香にも貸してもいい?」 「え、ゆか?」 唐突に親しげに女性の下の名を呼ぶ彼の言葉に、思わず私の心臓はドクンと激しく波打った。 「うん、由香」 「えと・・・」 ゆか、って誰・・・? 「みんなおはようー」 私が口ごもったちょうどその時、担任の七原由香<ななはらゆか>先生が扉をガラリと開けて入ってきた。 由香先生はロングのゆるふわウェーブをポニーテールにまとめ、白の半袖のブラウスと水色のスカート姿といういでたちだった。 「今日は暑いねー!私も半袖デビューしちゃったよ」 席に着き始める生徒たちに話しかける先生の笑顔はさながら清涼飲料水のCMに出てきそうな爽やかさだ。 ゆかって、由香先生の事・・・? 「じゃ、出欠とりまーす」 先生の軽やかな声でホームルームがそのまま始まったけれど、私の耳は次第にその声を遮断していった。 「文香!」 ハッと我に返った時はホームルームは終わっていて振り返ると心配そうな美雨ちゃんが私の前に立っていた。     
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