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「やめろ……。」
声が漏れた。指先が震える。息が苦しくなる。…何が舞台劇だ。これ全部、俺の生きた世界で起きている現実の出来事じゃないか。
「やめろ…!やめてくれ…!!」
「無理だよ。君の声は届かない。」
「傍観者に、歴史を変える事は出来ません。」
*
「……。」
戦争の結末は、見ていられないほど散々な有様だった。防衛の要となるはずのトルデ砦はあっけなく陥落し、渓谷にはテオリア兵の死体が山のように積み重なってゆく。俺はそんな絶望の光景を見返し、目を逸らす度に、何も出来ずに死んだ自分が堪らなく憎くなった。
「これが、君の死ぬ歴史の結末だ。」
「これが、貴方の死ぬ歴史の結末です。」
空を舞う花びらが消え、エンオーザーの山脈が見えなくなる。無力な自分が憎いだけなのに、悔しさの涙が止まらない。
「…でも大丈夫。君には時間を巻き戻す力がある。」
「貴方はこの絶望の歴史を覆す事が出来るのですよ。」
「……だったら、その方法を今すぐ教えてくれ。」
俺は俯く顔を上げ、溢れる涙を拭う。二人の言葉が真実なら、泣いているだけ時間の無駄だ。この時が巻き戻るのなら。歴史を覆す事が出来るのなら。その為なら俺は何だってやってやる。
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