エンオーザー山脈の決戦(1)

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 フリンピーノが偵察から戻ったので、砦では早速本格的な作戦会議が進められた。これから始まる戦争は、簡単に言えば人間と魔族の大決戦だ。魔族の帝国リギアが不可侵条約を破棄し、人間の王国テオリアへの宣戦布告を行ってから一か月。局所的にお互いの腹の中を探り合うだけの小規模な戦闘が続いていたが、二国間を遮るエンオーザー山脈の渓谷にリギア軍が続々と集結しているという報告を受け、それを迎え撃つ為にテオリア軍が決戦の要となる砦、トルデ砦に多くの戦力を終結させているというのが現在の状況だ。 「…という訳で、リギア軍は渓谷の向こう側にどっしり陣を構えてたよ、兵力はざっと10万くらいだと思う。」 「対するわが軍は8万と4千。…差は1万6千か。」 「とりあえず、渓谷内におびき寄せて逃げ道を塞ぎ、高所からの奇襲を行う作戦で行きましょう。」 「奇襲部隊を率いるのは?」 「やはり彼でしょうな。」 「…ん?」  いつのまにやら全員の視線を一身に浴びている俺。まあ、期待されるのもしょうがない。俺は物心ついた時から人間の国に暮らしていたが、両親は人間ではなく魔族だった。俗に言う龍人って奴だ。おかげで俺には尾も角もあるし、力も人間の数倍は強い。種族の違いで起こるいざこざはあったが、全て力でねじ伏せた。こういう事件もあってか、両親から目の上のたんこぶ的な扱いをされた俺は半ば無理やり軍制学校に通わされ、この間ついに史上最年少の指揮官に任命された訳だが、こうして実際に戦地に赴くのは今回が初めてだ。  翌日の朝、さっそく1000人ほどの奇襲部隊を4つ編成して出発する。俺が率いる事になったのは第一部隊だ。 「…という訳でみんな!弓とか魔杖は持ったか?」 「ばっちぇオッケーっすよー!王子様ー!」     
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