エンオーザー山脈の決戦(1)

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 俺の事を王子呼ばわりする金髪の男の名は『ハイン』。巨大な全身鎧を纏う大男だ。図体に反して童顔な所が意外と面白い。いついかなる時でも鎧を脱がない変人としても有名で、彼を部隊長にしてしまった第二部隊が心配だ。 「ってか、その王子様ってのは何だよ。」 「いやーアルケイド先輩って何か王子様っぽくないっすかー?」  っぽいと言われても、どの辺りが王子様なのかさっぱりだ。まあコイツの事は放っておこう。 「着いたよっ!」  エンオーザー山脈を軽装で登ったおかげで、昼前には目標の地点に到着する事が出来た。フリンピーノの報告通り、この場所は樹が多くて向こうからは見えづらく、一方でこちらからは渓谷全体を一望する事が出来る絶好の奇襲ポイントだ。  作戦に変更がなければ、今頃はテオリア軍の主力部隊が進撃を開始している頃だろう。と言っても、最初の進撃の目的はあくまでも敵の陽動だ。わざとらしく押し負け、わざとらしく撤退して敵を渓谷に封じ込める。俺たちの出番はその後だ。 「第一炎術中隊、炎術砲【ブラスター】の調整が完了した。」  赤い髪の女魔術師が報告にやって来る。これで奇襲の要となる魔砲の準備は整った。後は土術の岩石投射器や射手たちを並べるだけだが、時間にはまだ余裕がありそうだ。それまで何をして時間を潰そうか。 「それじゃアルケイド!ボクは他の部隊に準備が出来た事を伝えてくるね!」     
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