エンオーザー山脈の決戦(1)

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 チャンスを見定めた俺は、背中の鞘に納めた長剣を引き抜いて構え、残り二機のブラスター攻撃を回避して接近する。あんなに鈍いエイミングをこの俺が躱せないはずがない。まずは足を破壊してバランスを崩し、それから───。  ズドン。  届かないはずの鋼鉄鎧の腕が爆音とともに伸長する。俺の身体は衝撃波で地面に叩きつけられ、気付いた瞬間には目の前が真っ暗になっていた。 「…これが決闘の破城拳【デュエリング・パイルハンマー】、ですわ。」 *  何も感じない。何もない虚無の中で、俺は短い人生の結末を後悔した。  今頃フリンピーノはどんな顔で泣き喚いているのだろうか。戦争は結局どちらが勝つのだろうか。俺の体はちゃんと故郷に帰れるのだろうか。俺の勇姿は歴史に残るのだろうか。赤い髪の女魔術師は無事に逃げ延びたのだろうか。  …はぁ、もっと生きたかった。生きて世界を見届けたかった。あの星々のように。物語を読む時のように。劇を見る時のように。最後まで続きが見たかった。  さようなら。世界。
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