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エンオーザー山脈の決戦(2)
「久しぶりだね」
「久しぶりですね。」
誰かの声が聞こえる。見知らぬ少年と、少女の声だ。
俺は目を開き、静かに辺りの様子を伺う。どうやら俺は真っ白な花畑の上で仰向けになって倒れているようだ。
「……白い。」
それが、俺の率直な感想だった。あれだけ派手に潰されて死んだのだから、ここが死後の世界だという事もすぐに理解出来る。悔しいけど、やはり死を受け入れるしかないのかもしれない。
「大きくなったね。」
「大きくなりましたね。」
子供の声が耳元に響く。知らない声のはずなのに、何故か懐かしさを感じる。彼らとは以前どこかで面識があったのだろうか。思い出せそうなのに思い出せなくて、頭の中がもやもやする。
「誰だ?」
俺は立ち上がり、辺りを見回して少年と少女の姿を探す。しかし二人の姿はどこにも見えず、周囲には色褪せた石柱が幾つも並んでいるだけだ。
「どこにいるんだよ?」
「ここにいるよ。」
「ここにいます。」
白い花畑を風が通り過ぎる。無数の花びらが空を舞い、舞う花びらが俺を振り向かせる。風の吹く先に立っていたのは、二人の子供だ。
「死んでしまったようだね。アルケイド。」
「死んでしまいましたね。アルケイド」
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