第一話 怪異追跡

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第一話 怪異追跡

 神沼市の中心街から外側へ向かうに連れ、建物も人影も疎らになっていく。特に、今サジェと兵藤の向かっている北部方面はその傾向が顕著であった。この芦原町の辺りは工場の多い立地で、市外との輸送手段の殆どが封鎖された今では殆どが操業を停止しており、不気味なほど静まりかえっていた。  そんな芦原町を貫く広い道路の真ん中にサジェは着地した。兵藤はまた地面を悶え転げまわった。市内で誰も車に乗っていない現状、道路の上でも存分に転げまわることが出来るのはこんな時にはありがたい。ようやく回復した兵藤は先を急ぐサジェを追いかけ、通報の在った公園へ向かった。そこにはうずくまって震える若い男が一人いた。 「通報したのは君か?」  通報者を怯えさせないように兵藤は優しい口調で聞いた。男は答える代わりに激しく首を縦に振る。そのまま兵藤は通報者を落ち着かせながらゆっくりと、少しずつ事件の内容を聞き出していった。     
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