第一話 怪異追跡

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そんなことを考えていたが、途中で集中が乱されてしまった。パートナーのサジェの態度が妙におかしい。いつも冷静(少なくともそう見える)な彼女がなぜか妙にそわそわしていた。まるで話題のテレビ番組を見た翌日、友達と感想を言い合いたくてウキウキしている女子高生のように。 「……」 「ケンサ。本当に……ゾンビはいないのだろうか?」  何も言わないまま怪訝な顔をしていると、サジェの方からまた声を掛けてきた。さっきまでの冷静な声音と違い、今度の彼女の声はやはり妙に浮かれていた。正直面倒なことになりそうな予感はしたが、冷静に兵藤は返す。 「いないだろうな」 「何故だ?カミヌマにはゾンビウイルスを作るような会社がないからか?」  そんな危ない会社そうそうあってたまるか……。一応、ウイルスについては異世界産のものでゾンビ化能力を備えた種がいないとは言い切れない。しかし、異世界と現実世界の検査は徹底しているし、そもそもそんなウイルスがいるなら異世界が大変なことになっているはずだ。しかも、ウイルス以前に彼女はゾンビについて勘違いしている。 「ゾンビってのは、銃を撃つ派手なゲームや映画のために作られたもんじゃない。元はアフリカのブードゥー教って宗教の信仰者たちで行われた社会制裁なんだ。日本にブードゥー教の信者なんて殆どいないし、今こっちに来てる神様にもブードゥー教出身者はいない」 「……ようするに、ゾンビを生み出せる者がいないんだな」     
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