第一話 怪異追跡

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『ついな、今日はごめんな。遅くなりそうだ』  少し経ってからそんな連絡が携帯に届いたが、ついなは未だに返信していなかった。 「お、俺はケン兄ちゃんのこと、すごいと思うぜ!今度さ、あの美人なエルフのお姉さんに会わせてくれないかなー、なんて……」 「えるふ?エルフが来てたの?例の授業、3組は明後日なのよね」  次郎がついなを励まそうと軽口を叩き、そうとは知らず田代ちゃんが乗っかる。そのまま二人は話を続けるが、ついなだけは冷めたよう瞳でそれを見つめていた。自分も中学生の頃は、あんな風に話をしていたのをよく覚えている。だが、今はそんな気にはならなかった。  何故かはわからない。ただ、その冷めた感覚さえも、彼女はうっとおしく思っていた。理由のない、行き場のない冷めた怒りが心の底でゆっくりと蠢いているようだ。 「あれ?田代ちゃん?」 「え、剣さん?それに……」  聞きなれた声がした。俯いていた顔を上げると、そこには兄がいた。そしてその隣にいるのは、久しぶりに見た友人の沙代里。 「沙代里……!」 「沙代里っ」 「さよちん!?」     
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