第一話 現世再誕……?

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 そう言いながら、指の腹で身長数センチの彼女の頭を優しくなでる。もっとも、今度起こすときはもっと優しくな、と注意したが。だが撫でられて気持ちよさそうに体をくねらせる彼女には聞こえて無さそうだ。 「ケンサ」  声を掛けられ振り向くと、そこには日本人離れしたスーツ姿の美女がいた。日本人とは違うと言っても、コーカソイド的な外見とはまた違う。彫刻や絵画のように整った顔に、尖った耳と輝く金髪……。 彼女はエルフだった。見惚れそうな美貌に氷のように冷たい表情、しかし着ているスーツはやや小さく、所々ぱつんぱつんで、それがまた何とも不釣り合いだった。 「この後はコウコウで説明をするんだろう。時間が迫っているが、大丈夫なのか?」   げ、と声が漏れた。時計を確認すると、確かに予定の時間が迫っていた。急いで荷物を纏め始めた兵藤にエルフの女は表情を変えずじりっと距離を詰める。椅子に掛けていた上着と鞄を手に持つと、兵藤は椅子から立ち上がり、迫る彼女を止めようと言葉を繋いでいく。 「待っ、待てサジェ!確かに色々マズイが、走れば間に合わない距離じゃないし……俺最近運動不足だから、たまには走ろうと思うんだ。お前も一緒にどうだ、だからその、あの移動法だけは……」     
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