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次第に兵藤の声は小さくなっていく。そして、完全に聞こえなくなった後……部屋の窓が開き、そこから兵藤を小脇に抱えたサジェが飛び出した。兵藤は悲痛な叫びをあげていた。その声も、二人の姿が先ほどまで居た市役所から遠ざかるにつれ次第に小さくなっていく。
誰もが憧れる剣と魔法の世界。だが現実では誰もがそれを夢と嗤う。しかし、この街には確かにその夢があるのだ。エルフにドワーフ、ケンタウロスにドライアド・・・・・・・・・・・・。
街の人々はそんな世界の住人と何とか付き合っていこうと日々奮闘している。これは異世界と融合した街、神沼市に住む人々のお話……。
「ああああああぁぁぁぁ…………」
声と共に空に見えた影が大きくなってくる。影の正体は兵藤とサジェだ。兵藤はサジェに抱えられ、サジェは兵藤を抱えたまま、目的地である神陣高校の運動場に派手に着地した。砂煙が上がり衝撃の大きさを知らしめるが、当のサジェはぴんぴんしており、手に持ったストップウォッチを見て移動にかかった時間が前より縮まったことを嬉しそうにしていた。
一方で兵藤は、無様に地面に転がり呻いていた。
「うおぉ……ぉぁぁ……」
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