第一話 現世再誕……?

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 歩きながら釘を刺すように呟いた後、兵藤は神陣高校の校舎を見上げた。歴史ある学校だけあって校舎にはやや汚れが目立つ。しかしそれよりも異様なのは、校舎の西側のおよそ四分の一が巨大な氷塊に呑まれていることだ。この神陣高校も神沼市内で異世界と融合した場所の一つである。 今日この高校に来たのも、神沼市の現状を若者たちに伝えるため。異世界問題の最前線である神沼市役所復興課に属する兵藤には、この街に何が起きたのかを彼らに説明する義務がある。少なくとも、彼はそう思っていた。  玄関で待っていた新崎という若い男の教員と挨拶を済ませると、早速兵藤たちは今日説明をする予定のクラスへ向かった。階段を上がりながらいくつかの資料に目を通す。事前に取っていた融合後の神沼市に対するアンケート、寄せられた質問への回答、そして説明する1-Aクラスの名簿など。そこには気になる名前が二つ載っていた。 「ん……?」  どうしました、と後ろにいた新崎先生が尋ねるがその時ちょうどチャイムが鳴った。急ぎましょうと急かす新崎先生に従い、兵藤とサジェは急いで階段を駆け上がった。     
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