第一話 現世再誕……?

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 担任である新崎先生に最初の説明を任せ、兵藤は教室のすぐ外の廊下でサジェと最後の打ち合わせを行った。説明の大半は自分がするから、異世界出身のエルフの代表であるサジェはただ立っていればいい。相手は高校生だし、興味津々にジロジロ見られるかもしれないが我慢してくれ、と。サジェは何も言わず頷き、応援してくれているのか背中をバシッと叩いてくれた。ゆっくり深呼吸をし覚悟を決めた兵藤は、中から呼ばれたことを確認するとドアを開け教室へ入った。 「こんにちはー!」  大きな声で挨拶をしたが、高校生たちは軽く頭を下げただけだった。先週行った小学校では元気に返事をしてくれたのにと残念に思いつつ、兵藤は咳払いした後に自分の言葉で話を始めた。 「……まず、君たちの中にはまだこの街に起きた事件がどんなものかはっきり理解していない子がいるかもしれない。もしくは、理解していても自分には関係ないとか思っていたりとか……」 「まあ、半年前まではこの街も何の変哲のない普通の街だったわけだし、信じられないとか自分が知ろうが知らないでいようが……どっちでもいいと思うのも分からなくない。でも、現実はそんなこと待ってくれない。拒もうが目を逸らそうが逃げようが……」  そう語りながら、兵藤は教室内の一点を見つめる。並んだ机の一番後ろにある誰も座っていない席。名簿を確認したことで、あの席が欠席者の者ではないことは分かっていた。春休み以来、あの席に座るはずだった生徒は行方不明になっている。生徒から見えないところで兵藤は悔しさに拳をきつく握りしめた。しかし飽く迄表情には出さず、はきはきと言葉を繋げていく。     
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