第一話 現世再誕……?

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そう言いながら兵藤は時系列の隣に何か描き始めた。上には山を記号化した放物線、下側は海のイメージで塗りつぶす。その簡略化された神沼市の地図に赤いチョークで丸を描き込んでいく。神陣高校の付近とその他4か所。中でも海を示す白い塗りつぶしは丸ごと赤いチョークで囲われた。 「ひーふーみー……よし、5か所あるな。この地図上の赤い点が地震の直後に異世界に侵食され始めた地域だ」 「大学の先生によると、侵食というよりは上から塗りつぶすようなイメージらしい。青い絵の具で描かれた紙の上から、黒い油性ペンでぐちゃぐちゃに塗りつぶすような……もともとそこにあったものは、完全に消滅してしまうそうだ。これが神沼市異世界融合事件の始まりだけど……ここまでで質問は?」 反応はなかった。扱う題材が災害というだけあってやや重苦しい雰囲気になるのは兵藤にも分かってはいた。一応、侵食された地点には当時誰もおらず、行方不明者は出ていない。だが、事件はまだ始まったばかりだった。 「続けるぞ……浸食が開始したのがおよそ5時過ぎ。浸食が止まったのが6時過ぎで……午後7時には突然現れた世界規模の異物の調査が始まった。だが、調査開始の直後に、異世界から二つの存在が飛び出してきた」     
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