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深い色の目を見つめ返し、祥吾は目を眇める。
「仮に、そうだとしたら──死んでもお断りだ」
「滅多な事を言うなよ。お前は良くても……明人君のことがあるだろう」
息子の名を出され、祥吾の眉がピクリと動く。
「美人で気の強いところや物言いは、昔のお前とそっくりだ。これから良い具合に熟れて、色っぽくなるんだろうなあ。数年後が楽しみだ」
「……人の息子を、気安く語るな。ちょっかいなんか、かけてみろ……殺すぞ」
低い声で告げる祥吾の本気は伝わっているはずなのに、彼は相好を崩す。
「ヤキモチか? 心配するな、俺の本命はお前だけだよ。ただ明人君には、お前を口説くにあたって、挨拶させてもらっただけだ」
聞き逃せない言葉に、祥吾は眩暈を覚えた。
深く皺を刻んだ眉間を揉んで、唸るように問う。
「お前……明人に何を言った?」
「俺は大学生の頃から、ずっと祥吾のことが好きだということ。今回仕事に区切りがついたので、正式に交際を申し込もうと思っていること。そういうわけで──お前の父親を、俺にくれ、と言った」
頭が痛い。
「……明人は、何と?」
「アレは私の持ち物じゃありませんから、お好きにどうぞ──だと」
あの小生意気な息子なら、それくらい言うだろう。そう思っていたら、お前によく似ている、と彼が笑った。
何とも複雑な感が否めない。
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