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「そうして、あんなの(・・・・)の何処が良いんですか? と聞かれたから、お前の魅力を語ってやった。とは言っても、さわりの部分で止められたが」  たぶん、呆れられたのだろう。 「代わりと言っちゃなんだが、俺の息子やろうか? と言ったら、ものすごく嫌そうな顔をされた」  振られたなー、正虎。可哀想に──などと言いつつ笑っているあたり、本気とは思えない。  祥吾は、ただ深く溜息を吐いた。  犬の子のように、人ひとりをくれてやる、という態度を取られると、拒絶反応を示す者もいるだろう。明人と正虎は反りが合わないようだが、お互いに意識しているところもあるようだ。それがどういう感情を伴うものに変化してゆくのか、祥吾には判らない。  明人が正虎を憎んでも、愛しても──たぶん納得してしまえるのだろうな、と漠然と思う。 「まあ、俺の息子とは言っても──血縁的には甥っ子なんだけどな」  一瞬、何を言われたのか解らなかった。  無言で見つめ返す祥吾に、彼が小さく苦笑する。 「正虎は、俺の兄貴の種だ。割り切った関係で良いと言いながら、妊娠を口実に結婚を迫った女が、俺の元妻。当時、会社役員だった兄貴の稼ぐ金に、惹かれたらしい。結婚しないなら慰謝料と養育費を払え、とふっかけて来た。中絶費用より養育費の方が長く貰える、と思って産むことを選んだらしいから……頭が良いとは言えないな」  養育費は、子どもに対して支払われるものだ。それを自分の自由になる金だと思っているところ、子どもひとり育てる大変さを理解していないところは──確かに、思慮深い大人の女とは言えない。 「だが──その女を妻にしたのは、お前だろう」
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