1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
境界の神様
少女は消えたかった。しかし今のところその術を知らなかった。少女は仕方なしに当面の望みを「消えたい」から「逃げたい」に変更した。少女は半端にそれを実行した。毎日毎日窮屈な紺色の服に身を包みながら、建物の一番上までのぼり、白いコンクリートの上に寝転がって空を見上げていた。
少女は逃げたかった。
窮屈な紺色の服を強要する厭な力から。
たくさんのごちゃごちゃした生き物を一緒くたに閉じこめる白い建物から。
それなのに少女は窮屈な紺色の服を着て、白い建物の頂上に居た。毎日毎日を、少女は半端に逃げ続けていた。
最初のコメントを投稿しよう!