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「なにしてるのよ」
とげとげと威嚇しながら少女は言った。
「なにしてるのさ」
むにゃむにゃと鳴きながら生き物は言った。
「なんでわたしが答えなくちゃならないのよ」
「我亦然」
生き物はふわぁと手の平を口にあてて素早く起きあがると、突然スイッチが入ったロボットみたいな顔つきになった。
「いやなやつだな。きみは」
銀色に縁取られた硝子を顔に押しあてながら、厳然として生き物は言った。その言葉の唐突さに、少女はぽかんと口をあけた。少し間を空けて、胸と腹の間がぐつぐつと沸騰し始めた。
「なによ」
普段は投げつけられない言葉相手に、言い返す言葉をストックから見つけられず、少女はそれだけを言って生き物を威嚇した。
「なんだ。言い返すことも出来ないのか。つまらないやつだな」
胸と腹の間が、ぶすぶすと焦げ始めた。これで少女は、「いやなやつ」「つまらないやつ」という二つのレッテルを貼られたことになる。
「なによ」
くやしいと思いながらも再び同じ言葉を繰り返すと、生き物は少女を見て笑った。声をあげるやり方ではなく、口の端を上げるやり方だ。
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