境界の神様

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「きみは今の世界の他に、いくつ世界を持っている」  あまりにも淡々とした物言いだったので、少女はその言葉が疑問形になっているのに気付かなかった。生き物が少女の言葉を待っているのを見てから、やっとそれが問いだと気付いた。 「なんのはなし」  少女を見て、生き物は「やはり」と息を吐いた。生き物は明らかに少女を馬鹿にしていた。 「持っていないのなら、きみはこの世界で生きなければ、居ないことになるのだろう」  次の言葉は何とか理解出来た。  少女は、「まぁ、そうかもね」と答えた。 「かも、じゃない。分かっているのか?」  少女を馬鹿にしたまま、生き物は説教するように続けた。  そう言えば昔、私を生んだものがこんなことを言ってた、と少女はぼんやり考える。 「この世界で生きなければならないものが何故このような狭間に居る。迷いこんだのなら許せる。迷えるものは霊妙なものだ。だがきみはそうじゃない。ふらふらと流されてきた塵だ。じゃまなんだよ。分かってるのか?」  そう言えば昔、知ったかぶりの生き物がこんなことを言ってた、と少女はぼんやり考える。  でもあの時は、言の魂がこんなに真摯じゃなかった。
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