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「でも、」
初めて、少女は生き物に語りかけた。
「でもわたし、消えたいの」
喉がびりびりするくらい大きな声で、少女は生き物に語りかけた。
今のところは仕方なしに逃げたい、と思ってるけど。本当は、
「消えたいのよ」
生き物はひどく驚いたように眉を上げて少女を見た。眉を上げると、生き物は少し幼く見えた。
「その言葉は、僕から遠く離れたところのものだ」
生き物は眉根を寄せて、怪訝そうに少女を見た。
「何故きみがそんな言葉を口にする?」
生き物は更に問いを重ねた。
「そのような言葉を口にするものとはどういうものか、きみはきちんと知っているのか? きみのどこにそれがあるというんだ?」
なによ「それ」って。
少女が聞く前に、生き物は眉間から皺を外した。
「ふらふらと流されてきた塵だからこそ、なのだな」
生き物は納得したようだった。
納得すると、生き物はまた声を変えた。
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