境界の神様

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「じゃまだ」  またふりだしに戻った。 「なに?」  少女は呆れて言った。 「ちゃんとはなしを終わらせてよ」  生き物は微笑んだ。  他の生き物がうっとりと憧れる全てのものを持った姿が、太陽にきらりと煌めいた。 「じゃまだ。ふらふらと流されるのをやめ、地に足をつけ、この世界の道をたどって、ここを出て行け」  とても優しく微笑みながら、生き物は言った。  少女は右足でタンタンとコンクリートをたたいてみた。さっきじだんだを踏んだ際、固まっていた足は元に戻り、少女を縛していたコンクリートから今すぐにでも逃れられるようになっていた。  生き物は、白い建物の頂上に寝転がっていた。  少女は出口に手をかけた。そのままちらりと後ろを返り見たが、生き物はぴくりとも動かなかった。
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