一通目

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一通目

初めて置かれていた紙の話だ。 突然現れたそれに私は酷く動揺した。 目が覚めると、あるのだ。 綺麗に四つ折りにされたそれは まるで学生時代授業中に女子がやりとりしていたそれに良く似ていた。 「…なんだこれは。」 開くとそこには 「車」 とだけ書かれていた。 私は車を持っていないし、ましてや今日車に乗る予定も無い。 意味がわからない、それが正直な感想だった。 自分が何か書いたメモがたまたま枕元に? 否、ありえなかった。 これでも几帳面さには自身があった。 ぐるぐると考えを巡らせていた。 ーーーーーーーピピピピピ かけていたアラームが異常に響く。 「…そんな時間か。」 アラームを止め、私は支度を始める。 出かけねばいけない。 紙は気になるがそればかりに気をとられてはいけない。 私はしがないサラリーマンである。 紙があろうと男だろうと会社に行かねばならないのだ。 鏡の前に立ちネクタイを締める。 身だしなみを整えて部屋から出た。 マンションの玄関を出ると管理人が掃除をしていた。 話好きのおばさんだ。捕まると長い。 「あら!ははよう!」 無視は出来ない。後々面倒だからだ。 「おはようございます。」 「今 日は遅いのね!寝坊かしら?」     
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