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昼過ぎから突然降り出した雨。
当然長い傘を持って来てるわけもなく、小さな折り畳み傘を指していた。
しっかりと傘を持っていないと飛ばされそうなくらい強い。
「もう、雨やだ!」
友人の真美が言う。
雨は嫌いじゃない。あの人は、雨が好きだったから。ふと、あの人の顔を思い出す。ふと、あの人との日々を思い出す。傘を持つ手が緩む
その時ゴォーと強い風が吹いた。
「あっ。」
風に乗り傘が飛ばされる。
それは1人の男性の前にコツンと音を立てて落ちた。
「大丈夫ですか?」
「すみません!」
雨が私の制服を濡らす。
私はその男性の顔を見上げるように見た。
「あ。」
「あれ?佐藤さんじゃん。」
「せ、先生。」
その男性は私が一番会いたかった人。私の個別指導で担当だった人。
「相変わらずのやらかしだね。」
そう言いながら先生は傘を拾い上げる。
「ありがとうございます!」
「最近はどう?成績は。」
「まぁ、ぼちぼちですね。」
「頑張ってね。じゃあまた。」
「はい!さようなら。」
今離れたらまた、会えなくなる。
先生に会えなくなる。
「先生。私。先生のことがす…」
その時ゴロゴロと大きな雷がなった。
「なんだって?」
「いいえ。なんでもないです。さようなら。」
私はもう先生の方は見ないで前を向いて歩く。
会えて良かった。
大好きな人。
この雨は私の涙。
今日はたくさん泣こう。
忘れられなかった恋に今日ピリオドを打とう。
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