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遠く戦地より(チェルル)
チェルルは一人、思い詰めた目で帝国の城を見上げた。
複雑だった。分かっている、これは侵略だと。こんな事を、主はきっと望んでいないし、喜ばないと。
でも、じゃあどうする! どうしたらいい!
殺されるかもしてないと不安を抱え、いつがその日なのかに怯えている。
どこかで、分かっている。もう二度と、会うことはないのだろうと。
「こほっ」
小さく咳が出る。痰の絡むような、そんな感じ。体もどこか熱いが、それを言えばきりがない。
限界が近いのなんて、とっくの昔に覚悟はできている。
だからせめて、この命に意味が欲しい。何かを守ったのだと、誰かに言って欲しい。
チェルルは思いを、少し前に戻していた。
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