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なるほど、先輩からも印象はいいだろう。真面目に丁寧に仕事をし、嫌な顔一つせずに笑顔を絶やさない。そういう人間を仕事上嫌う事はない。
チェルルはひっそりと行動を開始した。流石に内部に入って人を殺せば見つかる危険性が高い。事はより慎重に、丁寧に進めなければならない。
そこで、手紙を書いた。彼女の母親のふりをして。
「お姉ちゃん!」
「あら、どうしたの?」
「さっき受付から手紙を預かって届けていたんだけど…これ、お姉ちゃんのだよね?」
チェルルは何食わぬ顔で手紙を差し出した。差出人を見て、シンディは驚いた顔をして休憩を取り、中を読み始めた。
「どうしよう。お母さん、病気だって…」
途端に青くなったシンディは泣きそうな顔をしていた。チェルルは心から心配そうな顔でシンディの体を支える。小さな弟を抱きしめる様に、彼女は震えていた。
彼女の母の筆跡を真似る事はそう難しくはなかった。何度か手紙を読ませてもらったからだ。それに、病気だとすれば多少の違和感や震えも「病気だから」という理由で通る。
「どうしよう、仕事忙しいのに…」
「でも、お父さんも体が弱くて、お母さんも病気なんて」
帰るように促すのは、そうして欲しいから。
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