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「だって、逃げるんじゃ!」
「馬鹿者。アルブレヒト兄にも同じ脅しがかかっておるよ」
つまり、「お前が逃げようとすればお前の部下達を殺す」と、捕まっている当人にも脅しがかかっているのか。
「ゲスなやり方だ」
思わず吐き捨てたファウストに、シウスは苦笑するばかりだ。
「まぁ、予想だがな。だがおそらく転々としているのは本当じゃ。その、神子姫という娘がアルブレヒト兄の予言を民に転々としながら伝えているのであれば、近い場所にいるだろう」
「なんでそう言える」
「兄の予言は数時間後、数日後の事。被害を食い止め予言の奇跡を演出したいのなら、時を置いては成功せぬ。一所に置いて、そこから予言を誰かが運ぶでは遅すぎるわ」
辟易した様子のシウス。その言葉に目を丸くしたダンは、悔しげに一度床を踏んだ。
「そういう事か」
「それでも大分精巧に隠された場所であろう。攻略の鍵はその神子姫じゃ。その娘が兄に同情的だったり、近くにいる存在ならば所在が掴めるやもしれぬ」
「俺は国内じゃ目立つからな。もう、祖国には易々と戻れねぇ」
「その為のチェルル、その為の騎士団じゃよ」
そう言ったシウスがファウストを見て、一つ頷いた。
「ファウスト、国内を早急に治める。準備は」
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