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「レーティスの親父さんってのが、出来た人でな。国境の小さな町でろくな自衛手段がないってんで、若い奴等に剣を習うよう呼びかけ、屋敷の庭を開放してた。ベリアンスの親父さんが志願した奴に稽古をつけてな。俺もキフラスも、他の奴もそこで剣を習ったんだ。辺境義勇兵の前身だ」
「苦労が多かったのだなえ」
「今にして思えばいい思い出だ。チェルル達は貧乏教会で食う物が少なくて盗みなんかもしてたんだが、レーティスの親父さんが小間使いに金を出してな。そこで勉学も習った。あいつらは特に才能があったよ」
みな、苦労をしてここまできた。主に出会い、努力や思いが実を結び、本当に深く信頼しあったのだろう。
それを引き裂いた者への怒りが、静かにフツフツと湧くように思えた。
「そのような間柄では、ハクインはこちらへと真偽を確かめ、事実であったら復讐を考えるやもしれぬな」
「あいつの得意は小回りの良さ、爆薬や閃光弾、煙玉なんかの科学の知識、器用さだろうな。剣自体はそれほど強くはない。剣でいけばリオガンのが厄介だな。あいつは素早く的確だ。しかも感情が読めない分、先の行動が分かりづらい」
「それは俺も思った。小回りとスピードは厄介だったな」
キフラスの方がよほど相手をしやすかった。周囲でちょこちょこと動かれるのは楽ができない。
「けどさぁ、そーいうのルースは嫌うよね」
オスカルの言葉に、ファウストもシウスも渋面を作る。
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