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薬草ご飯ばかりで臍を曲げる黒猫は、最近明らかに顔色が良くなった。体が軽くなったと本人も言っていたし、食事の量も増えた。食欲が戻ってきたらしい。
その努力を称えて、今日はお茶の時間にケーキを用意した。王都に行ったついでだ。甘い物が好きだと言っていたけれど、暫くお預けだったから。
そんな事で探しているけれど、お気に入りのお昼寝場所で僕が知っている場所にはいない。
仕方なく二階の僕の仕事部屋に荷物を先に置くことにした。あの二匹を探すのは、これでけっこう大変なのだ。
二階の南側、柔らかい日差しの差し込む僕の仕事部屋は主に書類や本が積み上がっている。執務机の反対側はくつろぎスペース。ここで寝てしまう事も多いから、一番いい家具を使っている。
ソファーも柔らかな布張り。窓際にはお気に入りの揺り椅子がある。椅子の上には少し大きめの膝掛けがあって、それもお気に入りだ。
部屋に入って、僕は目を丸くする。
窓際の、僕お気に入りの揺り椅子に座って黒猫は寝ていた。温かな日差しの入る窓際、レースカーテンを引き、窓をほんの少し開けて風を通し、腹から膝にかけては僕お気に入りの柔らかな膝掛けをかけて。
ドアを開けた音にも気付かないまま、ぐっすり眠っている。
「チェルル」
声をかけたけれど返事は返ってこない。ぐっすりだ。
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