354人が本棚に入れています
本棚に追加
溜息をついて荷物を置いて、僕は近づく。こうして間近で見ると、この黒猫は綺麗な顔をしている。
最初は痛んでいた黒髪も、しっかりケアをすると艶やかになった。睫毛が長く、目が大きくて、顔はふっくらと柔らかく小ぶり。体は少し小さく細いけれど、筋肉がついていないわけじゃない。少年を残した愛らしい顔立ちだ。
「チェルル、起きて」
揺すってみるとむずがるみたいにする。僕はそれに溜息をつく。
この子、起きている。狸寝入りじゃなくて、寝たふり猫だ。
「黒猫くん、起きて」
「眠いよ先生」
「寝過ぎだよ」
「俺、猫なんでしょ?」
まったく、あー言えばこー言う。
僕は腰に手を当ててムッとしてしまう。すると、チェルルの膝の上で丸くなって寝ていたニアまで顔を上げて、大きな欠伸を一つした。
「夜寝れてる?」
「寝てるよ。ここでの昼寝も、十分くらいだよ」
「寝れるようになったね」
「うん、気持ちいいんだ」
最初の頃はあまり眠れないみたいだった。どうやって寝ていたか聞いたら、睡眠効果のあるお茶を飲んだりしていたらしい。癖になってるじゃん、バカ。
これも体に蓄積された毒のせいだったのかもしれない。毒が抜け始めたら次第に眠れるようになっていった。
だからって、寝過ぎだけどね。
「ほら、起きなよ」
最初のコメントを投稿しよう!