美への執念

2/2
前へ
/2ページ
次へ
普通に結婚し普通の主婦になり普通に生きるんだと思っていた。そう、夫の正体を知るまでは。夫は死神だった。 夫は甘く囁く。お前は誰よりも美しくなれると。 アイドルやモデルに憧れていた。憧れていただけだった。 ククク、なんて、お前は醜いんだ?死神が・・・夫が笑う。 美しくなりたかった私は絶望に暮れた。 何としてでも美しくならなければいけなかった。 テレビの中では今日も美しい存在達が演技し歌い踊っている。 夢から覚めると鏡の前には、いつも醜い自分がいた。 私は、美しくなる事を強く望み、死神の夫は私の魂を欲しがった。 欲望が強いほど魂は輝きを増す。 美への執念と渇望。 そう、私は、美と引き換えに命を手放したのだ。それが私の死んだ理由。 そして、私は、二次元の世界で生まれ変わった。 キャラクターとしてヒロインとして永遠の美を手にしたのである。 だが、中身は空っぽの人形だった。 ククク・・・と、また夫が喉を鳴らして笑う。その声を魂の抜殻となった私は、どこか遠くで聞いていた。 コレクションが、また増えたと死神は嬉々とした。 さて、次の獲物を探さなくてはな。そう言うと死神は闇の中へ消えて行った。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加