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序
百日の絶望。
容赦なく照りつける日射し。斯様に日の光が隆盛を極めてから、幾日を数える事であろうか。
それはそれは酷い旱魃であった。気休めにさえならぬ程度の頼りない雲が、端切れのように浮かんでは、消える。
蒼天ばかりが続く毎日に、日毎、否、刻一刻と水が失われていく。草木も精気を無くして、田畑にはひびが入ってから久しい。
喉の乾きが日に日に弥増し、体が干からびていくのが恐怖の内に感じられたのはいつの頃か。
もう駄目なんじゃないか。
いっそ死出の旅路に向かってしまえば楽になれるのではないかと。何度もそう思い、それでもまだ死にたくはないと、藁にも縋る思いで神仏に祈り。
そうして。
変わらず照りつける日の光に、希望も絶望も綯い交ぜに身ごと灼かれる日々が続く。
雨が、水が、せめてこの身を灼く日射しを遮る雲が、欲しいと。渇望だけが、人びとの心を支配した。
言霊の幸う国が。
天照大神の膝元に在りしこの国が、よもや日の光によって荒廃していく様を曝す事になろうとは。まるで出来の悪い冗談のようだ。こんなにも明るい日の下で、目も眩むほど、暗闇の底に突き落とされたような絶望に打ちひしがれているだなんて。
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