吉野の桜

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()の人は、平泉を目指していた筈。遥か奥州を目指し旅立たねばならぬ。 もう一度彼()の人に、義経様に会う為に。 一目、見た時から恋に堕ちていたのでしょう。 打算も何もかも意味を成さなくなった今も、今でさえも、こんなにも胸が苦しいのです。貴方の子を産み落とした今でさえ。 恋しくて恋しくて、貴方に会えなくて、会いたくて。貴方を思う度、涙が溢れては止まらないのです。 私を置いていかないで。私も連れて行って。 ()の日、吉野山で最後までそう追い縋れていたら。 非力な女の身では、旅路の果てに命が尽きてしまうかもしれないけれど。行く手が暗闇に閉ざされていたとしても、傍に居る事が出来たなら、それだけで良かったの。それだけで良かったのに。 ()の日、貴方の手を取った時から、私の心は決まっていたのに。 雨の降らぬ日々をまたも迎えた此の国の為に、私は再び舞を奉納する事になって。()の日、吉住で舞う私を貴方は見初めてくれた。 源氏の御曹司。 美丈夫でありながら、遥か東国を越えた奥州で過ごしてきた所為か、何処か垢抜けない侍大将。 それが第一印象でした。 なんて勿体無い。そうも思いました。     
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