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これを悪夢だと言うにしても、なんて悪趣味な。 一向に雨が降る気配も無いこの惨状を案じられた後白河法皇は、龍神に祈りを捧げこの国に再び雨の恵みを、と試みられた。 龍神が住まうと言われし神泉苑に、法力確かな仏法僧百名が召集されたのは、それから間も無くのことである。 数多(あまた)居る僧の中でも高名な彼らに読経させ、荒ぶる魂を鎮め、そうして雨を降らせようと。 厳かに。けれど、とても緊迫した空気が漂う中、雨乞いの祈祷が始まった。 百名の高僧が唱和する経が重々しく響く。 だが、晴れ上がった空は何処までも青く、いっそ憎たらしい程に輝くばかりである。 待てど暮らせど、雨は降らぬ。 降らぬ処か雲一つ見当たらぬ始末。 百名の努力虚しく、空はからりと晴れたまま、その日は終わってしまった。 人々の絶望は計り知れぬ。 神も仏も無いものなのか。このまま涸れるのが天命なのか。と。 後日。 法皇は未だ荒ぶる御霊を鎮めるべく、今度は舞の奉納を御決断された。 京の都から眉目麗しいと評判の高い白拍子を百人、神泉苑へと呼び集めた。 名だたる白拍子達で埋め尽くされた神泉苑は、一気に華やいだ。     
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