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本当に、いっそ切り捨ててくれたら。貴方の手で、終わりにしてくれたら。そうしたら。なのに、貴方は私を生かし、待てとさえ言うのなら。
…それなら。
そうして、十六日の昼頃私達は別れて。何度も貴方の後を追おうとし、それを思い止まり、都に帰ろうとしては、未練が募りまた貴方を追いたくなって。
その繰り返し。
貴方が私の為に残してくれた筈の従者に、貴方がくださった物全てを奪われ、独り吉野の山に取り残され、独り雪の中を彷徨い、我が身の不幸を嘆き。途方に暮れては、貴方が居ない寂しさが、寒さを弥増し。そうして。
…夢を。
夢を、見ていました。 貴方に初めて出会った日の事を。
夢を、見ていました。 貴方と共に暮らした日々の事を。
夢を、見ていました。貴方と二人、此れからを生きていく。そんな夢を。
彼の日までは、確かに。
貴方と共に居る事が出来るなら、其処がたとえ地獄の底でも良かったのに。
彼の暗がりで、奈落の底で待っていてくれますか。
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