死因

7/8
前へ
/8ページ
次へ
 もう、意識を保つのも限界だ。  けれど、微かに残る意識に縋り、私は先程の衝撃と向き合う。  私が死ぬ理由。  私が死んだ理由。  それはあまりにも予想外で、滑稽な理由。  聞けば誰しもが驚き、呆れるだろう。「そんな理由で死ぬ訳が無い」と信じてくれないかもしれない。  けれど、その理由で私は死んだのだ。本人が言うのだから間違い無いだろう。  きっと私の死んだ理由は誰にもわからない。気付かれない。  原因不明のまま、変死扱い。きっとテレビドラマで見た様に解剖とかされるのだろう。それでも原因不明。病気でも何でもないのだから当然だと思う。  こんな理由で死んだなんて、誰も思わないだろうから。  自分が何故、死ななければならないのか。こんな理由でなんて不条理で理不尽だと思うけれど、自分のせいなら仕方ないと諦めるしかない。  少なくとも、理由がわからないまま死んでいくよりは断然いい。  ずっと、ずっと、心の奥にあったモノ。その正体を知った事に私は満足する。それこそ思い残す事が何もかも全て無くなってしまうほどに。  さようなら、アナタ。  私は残った意識を全て手放す。  最期にぽつりと呟く自分の声が聞こえた様な気がした。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加