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ソファの上で、業平にプロレス技をかけていたら、テレビからカメラのフラッシュのけたたましい音に視線をそちらに移した。
通訳の外国人の言葉と、隣に立っている高級スーツ姿の人物に目を疑った。
『彼は王の血を引く日本人です』
『DNA検査の結果と、王自身からお言葉を頂きました。生前、命を狙われ日本に滞在していた時、一夜だけ匿ってくれた女性だと。その女性を愛していると』
『王は王女しかお子が居らず、彼を正式に第一王子として宮殿に迎え、継承第一位の地位と役職を――』
「なんか……難しいこと言ってる」
「まあつまり命を助けてくれた女性が自分の子を産んでいて、それが男の子なら、ぜひ親子ともども、宮殿に迎えると。で、命をかくまってくれていた日本と国友を結びたいと」
「……それは少しわかったんだけど、その、スーツの人」
通訳の人やSPに囲まれている、スーツの人。
ジョージさん……だよね?
「なにあれ! ジョージさん、まじ石油王ってこと?」
「すっごーい。貧乏で苦労した彼が、シンデレラみたい。素敵」
「素敵じゃねえよ。なんで業平、ジョージさん監禁してでも捕まえておかなかったの! 本当に業平、お姫様になれたかもしれないのに」
あの、ジョージさんのファイル、個人情報だから読まなかったけど、読んでたらよかった。
本当の王子様だ。継承権第一位の、本物の王子様だ。
これから英語とアラブ語を覚えたり、帝王学や国風や文化を学ばないといけないって言ってるけど!
そんなの、努力家のジョージさんなら絶対できるじゃん。
ああああ。業平があの横でお姫様になれたのに。
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