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「いいよ。運命の相手との恋を応援してあげるから、だから結婚して」
「は?」
「私は、朝露が凌げて、たまにおやつが食べられたら、恋愛なんていらねえの。ここの庭の畑で野菜を育てて、野菜と業平のおばあちゃんが送ってくれるお米と、偶に贅沢にお肉買って、それで生きていけたらいい。スケープゴートに私を使っていいよ」
「ま、待ってちょうだい。貴方、もっと自分を大事にしなさい。何を言っているのか分かってるの?」
「だって業平のご両親には、幼少時代食べ物をいつも恵んでもらった御恩があるし。業平は男が好き。で、私は恋愛なんてしたくない。でも朝露を凌げる家が欲しい。業平にも恩がある。あんたが一生、ゲイとして苦しむぐらいなら、私をスケープゴートに使えばいいよ」
うちは今は一家離散したから、親父がどこで野垂れ死んでいるか知らない。でも生活保護費も私から殴って奪って、ギャンブルに使っていたクソジジイはいらない。
それよりも、私の頬を保冷材で冷やしてくれておにぎりをくれて、施設に電話してくれたり、たまに面会にきてくれた業平のご両親の方が人間として尊敬している。
「基本的に男の人は殴ってくるイメージしかないので、業平以外と結婚できる自信ないし」
「そこの部分、重要じゃない。んもう。でも……私も麻琴ちゃんは好きなのよ? 無人島に一か月放置されても生き残ってそうな逞しいところとか、大好きなのよ? でもねえ」
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