第一章 白い雪

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 そのとき、ゴーッという唸り音が大地の奥底から足下を伝わって聞こえてきた。 「雪崩だッ」  窓にしがみついて商社マンが叫んだ。四人は各々の姿勢で耳をすました。不気味な地鳴りは次第に近くなり、ますます大きくなろうとしていた。 「まさか」 「間違いない」 「どこだッ」 「分からないわよ」 「やばいぞ、南の沢じゃないのか」 「上だ、もっと上の方だ」  みな、口々に叫んだ。 「ここも危ないぞッ」  窓から三人を振り返って商社マンが叫んだ。 「ここは大丈夫」  医者が確信ありげにたしなめた。 「尾根筋にナダレはないものだ」 「そうとは限らないわよ!」  女監督が反論した。 「ナダレに弱い尾根だってあるわ。それにここは分岐点よ。上には沢がいくつかもあるわ」  その間にも地鳴りはだんだん大きくなり、山じゅうの空気と不気味に響きあって、四方八方から渦を巻くように小屋めがけて迫ってきた。 「真上だッ」  カメラマンが叫んだ。 「クソッ、やられるッ」     
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