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瞬間、ドドーッと轟音がしたかと思うと、急に棟木がバリバリ音をたて裂け始めた。直後に老朽化した屋根板が無数の木片になって飛び散り、真っ黒な雪が巨大な渦となってそこからなだれ込んだ。逃げる間も術もなく茫然と立ちすくむ四人は、そのまま一瞬のうちに闇の底に飲み込まれてしまった。小屋に辿りついてからちょうど四日目の夕刻近くの出来事だった。
◇
どれほど時間が経ったろうか。
「たすかったぞー……」
遠くの方でだれかの叫ぶ声がした。
睡魔をおしやりながら若い商社マンは、必死でそれに応じようとした。が、強い圧迫を胸に受け声にならなかった。肢体にかかる荷重をどうすることもできず、抜け出そうともがくうちに意識が薄れ、気だるい疲れにあらがうことができないまま、また深い眠りに引きこまれていった。
またどれほど時間が経ったろうか。
多分なにかの間違いだろう、という気持ちで目が覚めた。
辺りを見まわすと、薄明かりのなかで大勢のひとたちが、しきりになにか話し合ったり、忙しそうに動きまわっている。不思議な思いで上半身を起こし、灯の明かりに目をやると、見慣れた顔がこちらを見ていた。さっきまで一緒にいた医者の顔だった。おや、と若い商社マンは思った。いまごろなにをしているのだろう?
「いま、なん時ですか?」
若者が聞いた。
「時計が壊れてしまってね、だれにも分からないのですよ」
自分の腕時計を見ると、やはりガラスは割れ、針はなくなっていた。
「ここはどこですか?」
「さっきの小屋ですよ」
ほほえみながら医者が答えた。
「危なかったですな、お互いに」
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